
定年後の再就職に向けて
いきなり再就職の道を選ばなくても、定年を機に新しい仕事にチャレンジする人もいる。営業マンだったMさん(66歳)の場合は、あらかじめビル管理の勉強をしたうえで、現在はビル管理会社に嘱託として勤務をしている。
Mさんが利用したのは東京都の職業技術専門校の「ビル管理」コースで、修業期間は6ヶ月。授業料は無料、必要な教材もすべてそろっている。失業期間中なら失業給付が受けられ、厚生年金も全額支給され、それ以外に各種手当ももらえるという、安心して勉強ができる体制ができているのだ。こうした学校では、1年以上のコースに通う人に通学定期も支給されるから、思いがけず学生気分にひたれるというのもうれしい一面である。それに、なんといってもなかなか見つからない再就職先も紹介してくれるので心強い。これなら、コネがない親にも勧められそうだ。
全国には職業能力開発促進センサー68、職業能力開発短期大学校27、職業能力開発大学校1があり、各都道府県にも職業技術専門校が設置されている。
ちなみに、失業期間中に通う場合の手当だが、受講手当としては日額590円。また、特定の訓練科(鋳造科・板金科・溶接科・左官科・電気工事科など)には、特定職種受講手当が月額2000円支給される。家族と別居して寄宿する場合は、なんと寄宿手当(月額1万200円)も支給されるのだ。
さて、新しい技術を身に付けるにはもうひとつ、資格を取るという方法がある。資格には、国家資格と民間の機関が行っている私的資格があり、私的資格には語学検定のようにそれなりの権威のあるものもあれば、受講料を支払えば、自動的に資格が得られるものもある。
現在、国家資格は700を超えるといわれ、「弁護士」や「公認会計士」のように超難関なものから、比較的短期間に取りやすいものまでさまざま。定年後に挑戦するならば、自分の経歴や趣味を生かしたものを選べば合格の可能性も高いし、勉強する楽しさも味わえる。
資格が有利なのは、同じ職種でも専門職ということで、給料も高くなる点。「造園技能士」の資格をとれば、植木職人としての仕事の日当も倍以上違ってくる。退職者だけでなく、脱サラをめざすサラリーマンに注目されているのは、「税理士」「司法書士」「行政書士」「中小企業診断士」「社会保険労務士」「宅地建物取引主任者」「公害防止管理者」など。通信教育を利用するという方法もあるし、職業技術専門校などに通って勉強することもできる。
ただし最近、入学すればあたかも資格をくれるような宣伝をする詐欺的な商売も摘発されているから、せっかく前向きな気持ちになっている親をがっかりさせないためにも要注意。
1回で合格しなくても、2回、3回と挑戦して取得するケースもあり、なかには7回目でやっと公認会計士に合格したという粘り勝ち派もいる。
失業したり、会社を辞めたときには失業給付を受けるのが常識だが、定年退職した親も働く意志さえあれば失業給付を受ける資格はある。
失業給付が受けられるのは退職日の翌日から原則として1年の期間内で、給付日数は最長300日まで。もたもたして手続きが遅れると、支給日数が減ってしまうことになるが、これはあくまでも原則。「退職後、しばらくはのんびりと休養したい」「老親が寝たきりになって、いろいろ世話が大変で自分の再就職どころではない」というようなケースなどは、早めに手続きをしておけば、給付期限を1年間のばすこともできる。また、自分が病気になったときはさらに期間をのばすことが可能なので、問い合わせてみるとよい。
定年までゆっくり休みも取らず働いてきたのだから、まず骨休みをしたいという気持ちを尊重しているのは気が利いている。また定年の頃には自分の親の介護にあたるケースも多く、自分が病気の場合も含めて療養休暇、介護休暇のような期間を設けてあるのもありがたい。
とにかく、フルタイムで20年以上働いていれば、300日間は失業給付が受けられるので、その間にじっくりと自分にあった勤め先を決めるなり、資格を取るなりすればいいというわけだ。ちなみに、パートで働いていても年収が90万円以上で過去2年間に勤務日数11日以上の月が12ヶ月以上もあるなどの雇用条件だった場合には失業給付を受けられる。くわしい問い合わせや手続きは、いずれも公共職業安定所(ハローワーク)で。
失業給付の額は平均資金の5〜8割
失業給付は、平均賃金の5〜8割に当たる額が日額計算で支給される。たとえば月給が40万円だった人が、300日間の給付を受けられる場合は、賃金の50%300日分の合計は200万円にもなる。途中で再就職が決まった場合でも、条件によっては祝い金として再就職手当が支給されるし、65歳以上で退職したときは、日額ではなく一時金として一括で失業給付が支給される。
厚生年金と失業給付のダブル支給
現在は失業給付を受けていても、60歳から支給される厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)は支給されるシステムになっている。失業給付は本来、働く意欲があってこそ受け取れるものだが、意欲がなくても手続きをすればこのダブル支給額が受けられることになってしまう。そのため、再就職するよりもダブル支給のほうが収入が多くなる場合も出てきて「問題あり!」ということで、1998年からは、失業給付を受けている間は年金が支給されないシステムに変更される。
したがって、昭和13年生まれまでの親は、年金と失業給付のダブル支給という恩恵にあずかれるラッキーな世代というわけである。