職人の独り言

(一品物を作る苦労)
例えば、ご注文を請けて一品物のバッグを作るとしますよね。現物の見本があればそれ程、苦労することがありませんが、外形寸法、大まかな形状の図だけですと無い頭をかなり使わなくてはなりません。
ご希望の所を、細かく説明してくれるお客様はまだ、助かるのですが。それでも細かいところは、こちらが経験に基づき詰める形になります(中の造作ひとつにしても。マチの形状、中の仕切の方法など用途により様々です)。
いずれにしましてもお客様は専門家ではありませんから、その辺を考慮しながらこちらで、お客様が持っておられるイメージを想像しながら、なるべくそれに近づける様、努力しなければなりません(こうなると、職人本来の仕事以上の様な気もしますが?)。その為、どの様に作るか?一日考えることもあります。構想がまとまったら、次は、それを具体的な形にする作業に取りかからなくてはなりません。

ひとつの物を作るのには、いくつものパーツを作って、それを張り合わせたり、縫ったりするのですが、まず最初に、各パーツ全ての型を作らなければできないのです。
構想がまとまったら、次は、それを具体的な形にする作業に取りかかります。


型を作っているところ


作った型に合わせて、パーツになる革を裁断


時々、構造上不可能なご注文がありますが、そういう時は、こちらからアドバイスさせて頂くこともあります。
長年革製品作りに携わってまいりましたが、お客様のご希望で初めて作るものもあります。
入念に計画を立てて取り組むのですが、それでも縫い逢わせて出来上がって行くうちに、「これはおかしい?」ということもあり、最初から作り直すことも時々あります。まぁ、滅多に御座いませんが、その様なときは泣くに泣けません。

手間賃・工賃(作成料金)

大量生産ではないですから、いつも全て0からのスタートです。型を起こすだけでもかなり時間を要します。実際、完成までの時間を工賃に計算するとかなりの金額になってしまうことは事実です。
普通、職人の日当はこんなに安くは無いはずなのですが。仮に、時給1,000円だとして、朝から夕方まで8時間働いたとすると8,000円になります。一つの商品を作るのに3日かかったとして、手間賃だけで約24,000円。他に革代。しかし、実際は手間賃2万4千円もお客様から頂けないのが実状です。それなのに作った物が、自分で気に入らなければ作り直すし・・・・。正直、効率の悪い仕事です。
大量生産の商品に慣れてしまった人が殆どですから、そういう物を作る苦労を知っている方は少ないと思います。手仕事で一から作る物と、大量生産でコストを抑えて作る物は、出来いかんに 関わらず別物で有ることを少しでも知って頂けたらと思います。。資本主義の競争市場ですから、手仕事で大量生産品の価格に太刀打ちする事はほとんど不可能です(作家物、ブランド物のようであれば、また、話は別ですけど)。しかし、少しでもお客様 喜んで頂こうと努力しております。。沢山の方々に手作りの良さをあじわって頂きたいと。その一心かも知れません。「まあ、会社員なら、とっくに定年の年なのでこういうことが言えるのかも知れませんけどね。」

「職人ってーのは、いつの世でも貧乏じゃねーか。」仕事の後にお金がついて来る。そう考えないと・・・・・。お金を先に考えたら、やっていけない仕事かもしれません。根っからの職人なので、商売が下手なのは性がないと諦めております。

めっきり減った職人

昭和29年より、浅草にある某鞄店で修行し(そこの製品は5〜6年程前テレビでも取り上げられ、大臣の賞も貰っている)、その後、かれこれ50数年、革製品作りの職人として腕を磨いてきました。
業種は様々ですが、大勢いた仲間の職人は、全て廃業し、現在残っているは私だけになってしまいました(私の言う革職人は、大体専門が決まっていて、ベルトならベルト。バッグならバッグと、会社から材料を預かって、革の大きさからできる商品の数を割り出し、製品化あるいは加工をし、出来上がった分の工賃を頂く下請け職人のこと)。

機械化が進んだこと、ブランド製品等の台頭ですかねー?。国産の普通の革製品が、あまり売れなくなって、そういう職人はほんといなくなってしまいました。
また、革の仕事は奥が深いから、徒弟制度がない今。ある程度出来るようになるまでには、すごく時間がかかるし、一人前になってもなかなか仕事が無い昨今で、若い人は育ってこないのは当然かも知れません(下請け職人の場合、ある程度腕が良くないと、一定時間に数はできないし、また、なんでも出来るとなると、そうとうの年季がいるとおもいます)。

私は、かばん、バッグ、ベルト、小物類(サイフ)等一応出来ましたので、下職に見切りをつけ、自分で製造直販、修理などをやったのが幸いしたようです。その為、職人としてなんとか生き残ることが出来ました。これからも職人としていい仕事を残せるように頑張っていきたいと思います。

大変長くなりましたが、職人の独り言としてお聞き願えれば幸いです。
 
                                         工房主 敬白

     
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